AIが変える画像診断。
海外事例を通して、その現状とこれからを展望。

近年の画像認識技術の進化やデータ管理システムの構築に伴い、AIを用いた画像処理や診断が現実のものとなりつつあります。この新しいテクノロジーは、スクリーニングに対する医師の負担軽減や見落とし防止、検査時間の短縮による患者側の負担の軽減や安全性の向上、また、病院経営にとっても検査効率の上昇やコストの低下といったメリットが指摘されています。さらに、ビックデータの解析により、画像の特徴と病理の新たな相関関係も明らかになってきており、AIの導入は乳がんなど病理の早期発見にも貢献しています[※1]
今回は、画像診断分野におけるAIを活用した最先端の医療技術について、海外のスタートアップの事例を交えてご紹介します。
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2次元の超音波データを、AIの活用で3次元に変換。

まず、ドイツを拠点とするスタートアップImFusion[※2]の事例をご紹介します。この会社では、AIを活用することにより、2次元の超音波データを3次元に変換する技術を開発しています。このテクノロジーを活用すると、プローブでスキャンした2Dのリアルタイム画像を、事前に撮影しておいたCTや MRI画像に重ね合わせることにより、3D画像を生成することが可能です。医師がリアルタイムで3D画像にアクセスできるようになることから、CTやMRIが使用できない手術室における利用が期待されています。
また、オーストリアのPiur imaging社[※3]は、ImFusionのAIアルゴリズムを活用し、超音波機器にPiur tUS Infinity と呼ばれる小さなデバイスを取り付けることで、超音波画像を3Dの断面画像に変換する技術を開発しています。録画された超音波画像はWi-Fiを経由してInfinityワークステーションに送信され、医師は変換された3D断面画像を受け取ることができます。

AIによる検査時間短縮が、患者の負担軽減に。

AIの導入により、検査時間が大幅に短縮されたテクノロジーとして、シリコンバレーのスタートアップ Subtle Medicalが開発するSubtlePETがあります。SubtlePETは、画質は従来のままで、通常のPETよりも4倍の速さでスキャンを完了[※4]することができます。時間の短縮により、患者の負担が減少したり、病院側の検査効率が改善したりするだけでなく、放射線量も従来の75%減少[※5]させることに成功したことで、安全性もより高くなっています。2018年には、FDA(Food and Drug Administration)の認可がおり、核医学分野で利用が許可された初めてのAIデバイスとなりました。現在、アメリカの大学やイメージングセンターにおける試験的な導入が進んでいます。

AIによる診断が、許可されている例も登場。

医師のための手技支援・診断支援としてのAIが注目されている一方、AIのみでの診断が認可されているのがアメリカのIDx社が開発したIDx-DR[※6]です。IDx-DRは目の網膜画像から糖尿病網膜症を検出するソフトプログラム[※7]で、その診断精度の高さから専門医が不在であっても診断が許可されている初のスクリーニングデバイスとなっています。すでに実用化が進んでおり、画像診断や眼科の知識がない医療従事者でも糖尿病網膜症の診断ができるため、より多くの人にスクリーニングの機会を提供することができ、失明のリスクも低下するのではと期待されています。
また、最新のテクノロジーでは、患者自身がスマートフォンで目をスキャンして、スマートフォン内蔵のAIが自動的に糖尿病のリスクを検知し、病院に行くように勧める[※8]こともできるようになっています。

がんの早期発見にAIが寄与する期待も。

スクリーニングにAIを活用した例として、乳がんの早期発見の可能性も注目されています[※9]。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究では、6万人分の患者のマンモグラフィ画像をAIで解析することで、乳がんの発症を5年先まで予測することが可能になったとしています。乳がんの主要リスク要因とされている年齢、家族歴、子宮がん歴、ホルモンや生殖要因、乳腺密度だけでなく、授乳経験、食事、体重の増減といった要因も加えて分析することで、人間の目では確認できないわずかなパターンを画像から見つけ出すことに成功しています。
このようなAIを活用したスクリーニングが、乳がんだけではなく、心臓病やその他のがん、特に有効なリスクモデルがまだ確立されていないすい臓がんなどの早期発見に寄与する日も近いのではないかといわれています。

画像診断分野におけるAIの導入により、医師の負担軽減や診断精度の向上、患者にとっても検査時間の短縮、病理の早期発見、過疎地における医者不足解消といったメリットがクローズアップされています。一方、AIの実用性に関しては、診断の正確性を含め、多くの課題が残されています。特に、複数の症例を同時に診断することや症例が少ない病気の診断には対しては、AIの限界が指摘されています。しかし、将来はAIが得意とする領域と、医師にしかできない領域の連携が進み、AIの導入は医療全体に大きく貢献すると期待されています。